商業簿記3級 減価償却費・減価償却累計額

商業簿記 3級

間接法と直接法

商業簿記では、建物、備品、車両運搬具などの有形固定資産は使用や時間の経過に伴い価値が減少すると考えられるため、各有形固定資産の取得原価は決算や売却時に際して定められた使用期間 (耐用年数) に則って価値の配分が行われると共に、費用として同額が計上されます。

有形固定資産の価値の減少は当該有形固定資産の取得原価の費用化を意味することから、借方には減価償却費勘定 (費用) が用いられます。

そしてこのとき、借方の減価償却費勘定と対になるように貸方に生じるのが減価償却累計額勘定です。これは資産の評価勘定と言われるもので、有形固定資産の価値の減少分を表していることから、取得原価から控除することで実際価値である帳簿価額を求めることができます (評価勘定についてはこちらでも解説しています→『貸倒引当金・貸倒引当金繰入』)。

帳簿価額を求める式は次のようになります。

式 : 取得原価 − 減価償却累計額 = 帳簿価額

上記の式を使った具体例を挙げると、購入するためにかかった付随費用を含めた車両運搬具勘定が1,000,000円、車両運搬具減価償却累計額勘定が200,000円の場合には、差額である800,000円が帳簿価額ということになります。

式 : 車両運搬具 1,000,000 − 車両運搬具減価償却累計額 200,000 = 帳簿価額 800,000

通常、減価償却累計額勘定の前にはその固定資産の名前が入ります。車両運搬具であれば車両運搬具減価償却累計額、建物であれば建物減価償却累計額ですね。

このように減価償却累計額勘定を使って間接的に固定資産の価値を控除するのが間接法です。これに対して、資産勘定そのものを貸方にして直接減少させることを直接法といいます。

有形固定資産の売却時には帳簿価額を算定し実際の価値を把握する必要がありますから、都度、間接法または直接法を用いて帳簿価額を求めることになります。

土地は建物や備品と同様に有形固定資産ではありますが、使用や時の経過に伴って価値が減少するとは考えられないため減価償却は行いません。

定額法

毎年一定の減価償却費を計上する方法を定額法といいます。

定額法によって減価償却費を求める式は次のようになります。

式 : 取得原価 − 残存価額 ÷ 耐用年数 = 減価償却費

その有形固定資産が使用可能であると見込まれている年数を耐用年数といい、耐用年数経過後の有形固定資産の価値を残存価額といいます。残存価額は当該有形固定資産の使用を終了した後に売却して得られると見積もられる価額になります。

例:  期末に、期首に取得した備品200,000円の減価償却を間接法で行う。なお、残存価額は20,000円、耐用年数6年である。

式 : 200,000 − 20,000 ÷ 6 = 30,000

間接法

定額法ですから、この備品に関しては毎年期末に30,000円の減価償却費が計上されるということになります。

借方貸方
減価償却費  30,000備品減価償却累計額 30,000

また、上記のものは間接法ですので貸方は備品減価償却累計額となっていますが、もし直接法によって減価償却するように指示があれば次のように仕訳してください。

直接法

借方貸方
減価償却費    30,000備品     30,000

貸方を当該の有形固定資産にすることで直接に価値を減少させる、これが減価償却の直接法ということですね。

有形固定資産の売却

有形固定資産を売却する際にも取得原価と減価償却累計額の差額は考慮されなければいけません。それというもの帳簿価額がわからないことには実際の価値を把握できませんから、その取引が特であるのか損であるのか判断できなくなってしまうんですね。

そんなわけで、次は有形固定資産の売却時の仕訳を考えていきましょう。

例 : 当社 (会計期間 4/1〜3/31) は、期末日に期首に取得した備品300,000円を200,000円で売却し、売却代金の受け取りは来月末とした。以下の条件で仕訳けしなさい。 (残存価額0円、耐用年数10年、間接法)

借方貸方
備品減価償却累計額 30,000備品 300,000
固定資産売却損   70,000
未収入金      200,000

売却によって備品は手放されるということですから、帳簿からも消去するために備品勘定を貸方に、備品減価償却累計額勘定を借方にします。

備品減価償却累計額は、30,000円ですから (備品 300,000 − 0 ÷ 10 = 30,000円) 、これを備品勘定300,000円から差し引くと、帳簿価額は270,000円であることがわかります。

そして実際の備品の価値270,000円が200,000円でしか買ってもらえなかったということなので70,000円の損をしてしまっていますから、借方に固定資産売却損勘定 (費用) 70,000円を計上します。

未収入金については商品ではなく備品の売買ですから、売掛金ではないところに注意してください。

期中における有形固定資産の売却 (減価償却費の月割り計上)

先程の例では期末に備品の売却をしたため、減価償却を行った日と売却日は同日でした。しかし、有形固定資産の売却が期中になされる場合には減価償却費は月割り計上されなければいけません。

加えて、ここでは直接法によって減価償却費を月割り計上する仕訳例を見ていきましょう。

例題 :  当社 (会計期間4/1〜3/31) は卸売り業を営んでいる。
前期首に購入した車両運搬具(取得原価1,200,000円、残存価額0円、耐用年数10年、車両運搬具減価償却累計額120,000、定額法・間接法を採用し記帳) を翌年5月31日に700,000円で売却し、代金は来月に受け取る契約を行った。当期の減価償却費を直接法によって月割り計上した仕訳を示しなさい。

図にすると次のようなタイムテーブルになります。

Step 1

まず、問題文から前期末までの車両運搬具減価償却累計額は120,000円であることがわかりますから、先ほどの売却時の仕分けと同様にこれを借方にするとともに車両運搬具を貸方にして帳簿から消去します。

仕訳①

借方貸方
車両運搬具減価償却累計額  120,000車両運搬具     1,200,000

(※ 仕分けの途中ですのでこの段階では貸借の金額は不一致です。)

Step 2

次に当期の4/1〜5/31までの二ヶ月間の減価償却費を直接法で計上します。

月割り計上の式はこのようになります。

式 : 取得原価 − 残存価額 ÷ 耐用年数 × 月数 ÷ 12ヶ月 = 減価償却費

上の式を使って計算しますと……

式 : 1,200,000 − 0 ÷ 10 × 2 ÷ 12 = 20,000

二ヶ月間の減価償却費は20,000円であることがわかります。

仕訳②

借方貸方
減価償却費     20,000車両運搬具  20,000

直接法ですから貸方は車両運搬具になります。

これを先程の仕訳①に書き足して売却時の仕訳を示すと以下のようになります。

解答・仕訳③

借方貸方
車両運搬具減価償却累計額 120,000車両運搬具       1,200,000
減価償却費         20,000
固定資産売却損      360,000
未収入金         700,000

ここでちょっとおやっ?、と思った人いますかね。

仕訳②の貸方である車両運搬具勘定20,000円がここでは反映されていません。

しかも帳簿価額 (取得原価 − 減価償却累計額) と売却金の差額が固定資産売却益 (損) 勘定の金額になるはずですから(車両運搬具1,200,000円 − 車両運搬具減価償却累計額120,000円 − 未収入金700,000円 = 380,000円) で、固定資産売却損は380,000円になるはずなのに仕訳③では固定資産売却損が360,000円となっているのはおかしいと思いませんか?

ですが安心してください、これで仕訳けは正しく行われています。

どういうことかといいますと、本当は仕訳②の段階で車両運搬具の帳簿価額は20,000円分直接に減少していることから1,180,000円になっているのですが、そのことを仕訳けに示すと以下のように貸方に車両運搬具という同じ勘定科目が2つになってしまい見にくくなってしまいます。

借方貸方
車両運搬具減価償却累計額 120,000車両運搬具      1,180,000
減価償却費         20,000車両運搬具        20,000
固定資産売却損      360,000
未収入金         700,000

そのため、先程の仕訳③では貸方の車両運搬具勘定の金額を合算し1,200,000円にしているのですね。

つまるところ、固定資産売却損360,000円は車両運搬具の取得原価から間接的に120,000円直接20,000円を差し引いた帳簿価額1,060,000円と未収入金700,000円の差額として計上されたものだったということになります

まとめ・補足

減価償却費の理解は商業簿記3級の山場の一つなのではないかと思います。

わざわざ価値の減少を費用として認識するという行為は日常生活ではしませんから初めはなかなか分かりづらい部分かもしれません。ですが、式さえ覚えてしまえば複雑な計算はそれほど必要ありませんから、慣れればそう高い難易度ではありません。繰り返し問題を解いてとにかく慣れてみて下さい。

用語について少し補足しておきますと、残存価額というのは耐用年数経過後、有形固定資産を中古品として売却する際に見積もられる価額のことであって、最終的に処分にかかる費用の額ではないことに注意して下さい。

どういうわけかこのあたりがごちゃごちゃになっている参考書が散見されますが、こちらは除却費用という別の概念ですので混同しないようにしましょう (しかし、仮に間違った理解をしていても問題を解く上では何の支障もないのですが……) 。

また、耐用年数については国税庁がホームページ上で法定耐用年数を公開しています。

資料として一部抜粋してみました。

会計上は企業自身が耐用年数を決定することもあるのですが、税法上は原則として法定耐用年数の使用が義務付けられています。

同じ木造・合成樹脂造の建物であっても細目によって耐用年数に違いあるなど、見ていてなかなか興味深いものがありますので気になる方は国税庁のホームページを覗いてみることをおすすめします。

※上記の資料は、国税庁「減価償却資産の耐用年数表」を参考に作成しています。

国税庁 確定申告書等作成コーナー (https://www.keisan.nta.go.jp/r6yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensuhyo.html)

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