今回は正確な収益・費用の計上を目指して(前受・前払い)、(未収・未払い)勘定を使った期首の仕訳とその応用問題を押さえていきましょう。
前回、経過勘定の基本的な考え方についてはすでに学習しました(今回は基本的な部分の説明は省略しておりますので、未読の方はぜひこちらを見てからこのページに戻ってくることをお勧めします→part1解説編)。
前回は触れませんでしたが、期末に行った仕訳に対して期首には再振替仕訳を行う必要があります。再振替仕訳とは、借方と貸方が逆になる逆仕訳のことですね。
前受家賃を例にするとこうなります。
↓
3/31 借方 | 3/31 貸方 |
受取家賃 110,000 | 前受家賃 110,000 |
4/1 借方 | 4/1 貸方 |
前受家賃110,000 | 受取家賃 110,000 |
期末の借方と貸方の勘定科目が期首には逆側になっていることが確認できると思います。これは、前受以外の経過勘定である前払い、未収,未払いについても同様に処理されます。
これを行っていないと今年度の収益・費用を正しく計上できませんから必ず行わなければなりません。なぜ正しく計上できないのかは具体的な例があった方がわかりやすいですから、次の問題を試しに解いてみてください。
次の連続した仕訳を示しなさい。なお会計期間は4/1〜3/31とする。
問(1) 2023年、3月1日に当社は取引先に物件を3年契約、家賃一年分120,000円を前払いの条件で貸し与えた。決算日の仕訳を示しなさい。
問(2) 2024年の期首を迎えた。
問(3) 2025年3月1日、取引先から向こう一年分の家賃が当座預金に振り込まれた。
問(4)期末日に経過勘定の計上を行うと共に収益勘定の適切な処理を行った。
解答
問(1)
3/31 借方 | 3/31 貸方 |
受取家賃 110,000 | 前受家賃 110,000 |
問(2)
4/1 借方 | 4/1 貸方 |
前受家賃 110,000 | 受取家賃 110,000 |
問(3)
3/1 借方 | 3/1 貸方 |
当座預金 120,000 | 受取家賃120,000 |
問(4)
3/31 借方 | 3/31 貸方 |
受取家賃 110,000 | 前受家賃 110,000 |
受取家賃 120,000 | 損益 120,000 |
2023/3/31〜2024/3/31までの仕訳問題ですね。
問(1)、問(2)に関しては先程の例題と全く同じ決算日に行う経過勘定の計上と翌年の再振替仕訳です。
問(3)に関しては大丈夫そうですかね。1年間の家賃120,000円が当座預金に振り込まれた仕訳です。
難関は問(4)ですよね。まず、前受家賃ですが、これは当期に属さない分の収益(受取家賃)の計上ですから、前年度の期末の処理、つまり問(1)のものと全く同じ操作ということになります。
次は損益勘定です。忘れがちですか、決算日には収益・費用は損益勘定に振替られます。
これらの連続した仕訳の中で当期の収益として認識できるのは4/1の受取家賃110,000円と3/1の受取家賃120,000円ですが、3/31には借方に受取家賃110,000円が計上されていますから、実際の収益は120,000円になります(110,000+120,000−110,000=120,000)。
したがって、損益勘定に振替られる受取家賃(収益)は120,000円です。
このように、当期の収益額を計算しながら損益勘定に振替えを行いましょう。貸方、借方の収益、あるいは費用勘定を相殺させることをお忘れなく!
そうそう、再振替仕訳の必要性の話でしたね。
もし再振替仕訳を行わないとなると問(2)の仕訳そのものがなくなりますから、貸方の受取家賃勘定は問(3)3/1の120,000円のみになりますよね。そうすると問(4)3/31の受取家賃110,000円と相殺した際に10,000円が当期の収益となってしまいます(問(1)の仕訳は前期のものなのでこの借方にある受取家賃は繰り越しません)。
こういった事情を鑑みると当期の収益を正しく認識するためには再振替仕訳は必ず必要なんですね。
復習にもう一問解いてみましょう。
例題 : 当社は7月1日に取引先の銀行から年利8.0%、3年契約で1,000,000円を借入れた。なお、利払い日は6月末日と12月末日である。空欄(ア)、(イ)の正しい組み合わせは次のうちどれか解答しなさい。
7/1 借方 | 7/1 貸方 |
当座預金 1,000,000 | 借入金 1,000,000 |
12/31 借方 | 12/31 貸方 |
支払利息 40,000 | 当座預金 40,000 |
3/31 借方 | 3/31 貸方 |
支払利息 20,000 | 未払利息 20,000 |
損益 ( ア ) | 支払利息( イ ) |
a. (ア)60,000 (イ)60,000
b. (ア)40,000 (イ)40,000
c. (ア)60,000 (イ)80,000
解答が決まったらスクロールしてください。
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正確は……
a. (ア)60,000 (イ)60,000 でした!
今回は相殺するものはないですから、借方にある当期の費用の合計(40,000+20,000=60,000)をそのまま損益勘定に振替えてくださいね。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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